AI利用のログを取る — 監査で何を見せるかから逆算する
AI利用のログを取るときに「全部のプロンプトを保存する」と決めると、その保存データ自体が新しいリスクになる。監査で何を見せる必要があるかから逆算して範囲を決める。
編集部
AI Tools Hub 編集部 · 公開 2026-11-01

何のために取るのか
目的が複数あり、必要なデータが違う。先に目的を1つに絞らないと、全部保存するという結論になる。
| 目的 | 必要なデータ | 保存期間の目安 |
|---|---|---|
| 費用の管理 | 誰が何回、どのモデルを使ったか | 会計期間に合わせる |
| 方針違反の検知 | 違反の疑いがある利用の記録 | 検知後の調査に必要な期間 |
| インシデント対応 | 問題の時点の入出力 | 発覚までの猶予を見た期間 |
| 品質改善 | 出力の評価と修正の記録 | 改善サイクルに合わせる |
保存しないほうがよいもの
プロンプトの全文を無期限に保存すると、そこに個人情報、顧客情報、未公開の事業情報が蓄積する。このデータベースが漏洩した場合の影響は、元の利用のリスクより大きくなることがある。
プロンプトの全文(必要な場合は期間を限定する)出力の全文(同じ)添付したファイルの内容
代わりに、誰が・いつ・どのモデルを・何トークン使ったか、というメタデータを残す。費用管理と利用状況の把握はこれで足りる。
全文が必要な場合の扱い
インシデント対応や品質改善で全文が必要なケースはある。その場合は期間を限定し、アクセス権限を絞り、保管場所を暗号化する。
保存期間を30日〜90日などに限定し、自動削除する閲覧できる人を名指しで限定する閲覧自体をログに残す個人情報が含まれる可能性を前提に、保管場所を分ける
ツールで取る場合
Langfuse や Helicone のような可観測性ツールは、入出力を含むトレースを保存する。開発環境では有用だが、本番の利用者データを同じ設定で流すと、上記の問題がそのまま発生する。
本番では、保存する項目を設定で絞る。多くのツールは入出力の保存をオフにできる。オフにしても費用とレイテンシの分析はできる。
監査で聞かれること
実際の監査で求められるのは、全部の記録ではなく「統制が機能していることの証拠」である。誰がアクセスできるか、方針違反をどう検知するか、違反があった場合に何をするか。これに答えられる記録を揃えるほうが、全文の山より有効である。
よくある質問
- Q. 保存期間はどれくらいが妥当ですか。
- A. メタデータは会計期間と監査周期に合わせて1〜2年、入出力の全文は30〜90日が実務上の目安です。業種の規制がある場合はそちらが優先します。


