AIガバナンスを運用する — 方針を書いた後に残る仕事
AI利用方針の文書は作れる。実際に機能しない原因は、誰が申請を見て、誰が例外を認め、誰が年に一度見直すのかが決まっていないことである。
編集部
AI Tools Hub 編集部 · 公開 2026-11-01

方針だけでは動かない
方針の文書を公開した時点で終わりにすると、半年後には現場が勝手に使い始めている状態に戻る。禁止したからではなく、申請の経路が無いか、あっても返答が遅いからである。
必要なのは、申請してすぐ答えが返る仕組みである。これには担当と基準が要る。
決めるべき4つの役割
| 役割 | やること | 頻度 |
|---|---|---|
| 一次審査 | 申請を見て、既承認リストに該当するかを判定 | 随時(目標2営業日) |
| 個別審査 | 新規のツールをリスク評価して可否を決める | 随時(目標2週間) |
| 例外承認 | 方針から外れる利用を条件付きで認める | 随時 |
| 棚卸し | 承認済みツールの利用状況と規約変更を確認 | 年1〜2回 |
既承認リストを作る
毎回個別に審査すると回らない。「このツールは、この用途の範囲でなら申請不要」というリストを作る。現場の大半の要望はこのリストで吸収できる。
リストには用途の範囲を必ず書く。「Claude は可」ではなく「Claude は社内文書の要約と文章の作成に限り可、顧客データの入力は不可」と書く。
例外を認める設計にする
例外を一切認めない方針は、守られない方針になる。条件付きで認める経路を作り、認めた例外を記録する。記録が溜まると、方針を直すべき箇所が見える。
例外承認の権限は、部門長レベルに置くのが現実的である。情シスに集めると詰まる。
棚卸しで見るもの
承認済みツールのうち、実際に使われていないもの(契約を切る)提供元の利用規約が変わっていないか承認時の前提(データの扱いなど)が維持されているか申請されずに使われているツールがないか(費用の明細から探す)
4つ目が最も有効である。クレジットカードの明細と経費精算を見ると、申請されていない利用が見つかる。これを責めるのではなく、申請の経路が使いにくい証拠として扱う。
小さな組織での現実
数十人の組織で4つの役割を分けるのは過剰である。実務では、情シスまたは管理部門の1人が全部を持ち、既承認リストを公開して、新規の判断だけを引き受ける形になる。
重要なのは役割の数ではなく、申請先が明示されていて、答えが数日で返ることである。
よくある質問
- Q. 専任を置く必要がありますか。
- A. 数百人規模までは兼任で回ります。必要なのは専任者より、既承認リストと返答期限の明示です。


