AI利用のリスク評価 — 稟議に添える1枚の作り方
AIツール導入の稟議で「リスクを検討した」と書くだけでは通らない。何を想定し、どう抑えたかを1枚にまとめる形を示す。コピーして使える構成にした。
編集部
AI Tools Hub 編集部 · 公開 2026-11-01

4つの分類で書く
リスクを網羅しようとすると終わらない。実務では、以下の4分類で各2〜3行書けば、審査する側が判断できる。
| 分類 | 想定するリスク | 書くべき対策 |
|---|---|---|
| 情報漏洩 | 入力したデータが学習に使われる・漏洩する | 契約上のゼロ保持・送るデータの範囲・マスキング |
| 誤出力 | 事実と異なる内容を利用者に出す | 人の確認を挟む工程・出力の用途の限定 |
| 権利侵害 | 生成物が他者の権利を侵害する | 商用利用条件の確認・類似性の確認工程 |
| 可用性 | 提供元の障害・仕様変更・終了 | 代替手段・切り替えの工数・依存の範囲 |
書き方の例:情報漏洩
入力するデータは社内の技術文書に限定し、顧客の個人データは入力しない。提供元の利用規約で、API経由の入力が学習に使われないことを確認済み(規約の該当箇所を添付)。入力前のマスキング処理は本件の範囲では不要と判断(個人情報を含む文書を対象外としたため)。
重要なのは「対象外とした」という線引きを書くことである。全部のリスクを技術で抑えるのではなく、範囲を狭めることで抑えた、と説明するほうが通りやすい。
書き方の例:可用性
本ツールが停止した場合、該当業務は従来の手順(手作業)に戻る。切り替えに必要な工数は半日程度で、業務停止には至らない。提供元がサービスを終了した場合、同等の機能を持つ代替として〇〇が存在する。
可用性は軽視されやすいが、審査する側が気にする項目である。「止まったらどうするか」に答えがあるかどうかで、印象が変わる。
書かないほうがよいこと
「AIの判断には限界があるため慎重に運用します」(具体性がない)「セキュリティ対策は万全です」(根拠がない断定)「業界標準のため問題ありません」(他社がやっていることは根拠にならない)数値の根拠がない効果試算(削減時間を実測前に書かない)
更新の前提を書く
1枚に「本評価は〇年〇月時点。提供元の規約変更時、または年1回見直す」と書く。評価が古くなったときに誰も気づかない状態を避けられる。見直しの担当者も書いておく。
規制業種の場合
金融・医療・公共では、上の4分類に加えて業種の要件が入る。所管のガイドラインを確認し、該当する条項への対応を別項目として書く。この部分は汎用のテンプレートでは埋められない。
よくある質問
- Q. 1枚で足りますか。
- A. 新規のツールを1つ導入する稟議なら足ります。全社のAI利用方針を定める場合は、方針の文書と運用の設計が別に必要です。


